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優れた人

私は目立たない人が好きだ。それは、内向的とか

大人しいとか暗いという意味では全く無い。

生まれながらにして、逃れられない宿命を背負っても

くじけずに悲観せずに生きていく強い人たちのことだ。

逃げられない・・・。自分が対処するしか出来ない事柄。

家庭環境や身体のハンデをものともせず、私たちの出来ないことを

成し遂げる人たち。いかに自分の日頃の努力が足りないかを

痛感させてくれる人たち。彼らは生きるのに必死なので、

他人は目に入らない。なので自分に集中する。それが私たちに

出来ないことだ。つまらない見栄や意地が無いため、

日々向上して、最後には成功する。見習わなくては・・・。

以前、親が体調を崩して入院したことがあった。

それまで大した苦労をしたことのない私は、疲労困憊してしまった。

精神的に参ってしまったのだ。病院に通ううちに、少し足の悪い

50代くらいの女性とすれ違うようになった。奥の病室に通う人だった。

そのうち挨拶するようになった。どこにでもいる普通の女性で、

誰かのおかあさん、奥さんであることは、推測できた。

きっと旦那さんが入院していて、お世話に毎日来ていると思っていた。

私はだんだん、この女性を見るとほっとするようになった。

親戚や、兄弟や、友人などの他の誰よりも、一番ほっとする人だった。

同じ病院に入院している家族を持つという共通点からもあったが

なんとも落ち着いた女性で、押し付けがましくない所に

好感を持ってしまった。ある夜、私は病院の待合室で

マッサージチェアがあったので、半分眠りながら座っていた。

そこへ、その女性が自販機の飲み物を買いに来た。

初めて会話をした。たわいもない会話だったが、最後に

「辛いでしょうね。無理しないでくださいね。大丈夫ですよ」と

言って帰って行った。私は、誰もいない夜の待合室で

一人で泣いた。彼女は毎日、足を少し引きずりながら、荷物を抱え、

炎天下の中、必死に病院へ向かって歩く背中を、

私は通りで見かけていた。本当は疲れているだろうに、

全くそんなそぶりも見せずに、さらに私のことまで気遣ってくれる。

その強さはどこから来るのだろうと思った。

しばらくして、私の親が転院のために、退院をするときに

私は奥の病室へ挨拶に行った。そこには、その女性と

若い男の子がいた。男の子といっても、高校生くらい?だろうか。

旦那さんだと思っていた人は、息子さんだったのだ。

女性は、「退院ですか?良かったですね」と言ってくれた。

転院のことを話して、挨拶すると、息子さんが頭を下げてくれた。

若くてかわいらしい男の子だった。笑顔で挨拶してくれた親子だった。

その後、幸いにも親は無事退院して元気になった。

私はあの時、あの女性に救われたのだ。あの女性には

神様が宿っていたのではないかと今でも思っている。

優れた人とは、強さを持った人だ。人を思いやれる人。

こういう人は、普通に目立たずに毎日をきちんと生きている。

毒のある人間は強くなれない。優れた人は、目立たない。

そういう人と知り合いや友達になれるのは、素敵なことだ。

私自身もそのような人間になりたい。

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